社長室通信 第89号 『いざというときに、腹を決めて行動する』

数年前、ある建設会社さまとトラブルになりました。


弊社の職人がヘルメットを被っていなかったため、

ペナルティとして数十万円の工事費用を

支払わないというのです。


この対応には少し違和感がありましたが、

こちらは下請けという立場であり、

ご迷惑をお掛けしたことは事実なので、

謝罪に行こうとしました。



すると、

その現場を担当していたスタッフたちから、

「社長、謝りに行かないでください。

 もうあそこの仕事はしたくないです」

と言われました。


これまでも高圧的な対応をされたり、

極端な値引きをされたりと、

担当者たちは辛い思いをしていたからです。



私は素心学塾で『徳治経営』を学びました。


経営者が思いやりの心で経営することで、

具体的には

「社員に不快さを与えず、安心と喜びを与える」

ことを心がけることです。


その建設会社さまは弊社のなかでも

売上上位のお客さまでしたが、

社員の想いを尊重し、

今後の取引を停止することを決断しました。



すると、

今度は別のベテランスタッフが猛反対してきます。


「こっちから仕事を断ったら、

 悪い噂が広まり、

 他のお客さんも離れてしまう」

と言うのです。


確かに客商売でお店側からお客さまを断ることは、

ご法度と言われています。


しかし私は、

「売上より社員を大切にしたい」

「他のお客さまもきっと理解してくださる」

という思いを伝え、

1時間半話し合ったのちに

なんとか理解してくれました。



その後、建設会社さまに謝罪し、

トラブル分の費用はいただかず、

「私たちの技術力ではご迷惑をお掛けするので」

という理由で、

協力業者会を辞めさせていただきました。


最終的には費用はお支払いしてくださいましたが、

その後の取引は停止させていただきました。




「品性を高める」ための徳目の5つめは、

『勇気』です。


「いざというときに、

 しっかりと自分の腹を決めて

 行動する気概」

のことをいいます。



トラブルが発生した時に、

勇気をもって決断し行動することは大切です。


しかし、無知による行動や感情的な行為は、

まわりに迷惑を掛けたり、

大損害に繋がるときもあります。



「勇気ある人物であるためには、

 日頃から幅広く知識を吸収し、

 それを活用するために見識を身につけ、

 さらには、大胆に行動できる

 胆識を養っておくことが肝要だ。」


        陽明学者 安岡正篤




今回の件については、


素心学塾で『徳治経営』という

【知識】を学び、


それを「売上より社員を大切にする」という

【見識】として活用し、


「反対されても信念を貫く」という

【胆識】で実行することができました。




その後、

担当だったスタッフたちが中心となって

頑張ってくれたお陰で、

業績は下がるどころか大きく改善しました。


また、

この件を相談していた工事会社の社長は、

「素晴らしい経営判断だった」

と評価してくださいました。




これからも、

いざというときには腹を決めて行動し、

思いやりの経営を実践していきたいと思います。

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